影の交換・第一章「新しい始まり」

怖い話

私たちは、午後の日差しが強すぎるせいで、色褪せた屋敷に引っ越す日、昔の絵葉書みたいな町を通り過ぎた。ママが「新しい生活が始まるわよ、エマ」と言ったとき、私は後部座席で古い鍵のペンダントを弄んでいた。それは引っ越しの数週間前、私の新しい部屋のクローゼットで見つけたものだ。どうしてそこにあったのか誰にもわからない。でも私はそれを見つけた瞬間から、何か特別なものだと感じていた。

屋敷に着いたとき、兄のノアは「うわ、これ全部ウチなの?」と言って目を丸くした。その屋敷は、ヴィクトリアン様式の古い建物で、庭には野生の花が咲き乱れ、長いドライブウェイが続いていた。外壁のペンキは所々剥がれ落ちていて、屋根の端には苔が生えていた。でも、それは私たちの新しい家だった。

最初の夜、私は家の中を探検した。木の床はギシギシと音を立て、階段の各段が私の足元で古い話を囁くようだった。私が見つけたのは、家具が少ない広い部屋と、隅に残された古い家具の山だった。そして、ふとしたことから、私は押し入れの奥に隠し扉を見つけた。それはかなり古く、開けるのに少し力が要った。扉を開けると、埃っぽい空気が私を迎え入れた。

部屋の中には日記と人形が置かれていた。日記は、この屋敷の前の所有者、ミスター・シルバーが書いたもののようだった。彼の書き込みは、日常の出来事から、どんどん奇妙な内容へと変わっていった。日記の最後のページには、人形と共に写真が挟まれており、不気味な文が書かれていた。「彼女は私の保護者であり、私の研究の結晶です。」

私は人形を手に取った。それはとても美しいものだったけれど、触れると心臓がドキドキして、何かが違うと感じた。人形の目は、まるで生きているかのように輝いていた。その夜、私は人形を部屋に持ち帰った。なぜか、彼女を置いていくことができなかったのだ。

翌日、私はノアと一緒に庭を探検した。ノアはいつも私をからかってばかりだけど、私たちは実はとても仲がいい。私たちの影が、夕日に向かって長く伸びていくのを見て、私はふと思った。影って、本当にただの影なのかな? 影にも、もしかしたら自分のストーリーがあるのかもしれない。

その夜、私たちの新しい家は、古い木々の間から吹き抜ける風に揺れた。家はうめき声をあげ、窓ガラスは軋んだ。私は人形を抱いてベッドに入った。彼女は、まるで私を守っているように感じた。でも、それはただの始まりに過ぎなかった。私たち家族の運命は、もう既に、この屋敷とその秘密に縛られていたのだ。

私は夢の中で、人形が私に話しかけているのを聞いた。彼女の声は甘く、ほとんど歌うようだったが、言葉の背後には冷たい鋭さがあった。夢の中で、私は人形に名前を尋ねた。彼女は「アリエル」と答えた。それはきっと、前の所有者が彼女に付けた名前に違いない。

夢から覚めたとき、私の部屋は静かで、ただ時計の針の音だけが聞こえた。でも、人形はベッドの端に座っていて、夜通し私のことを見守っていたようだった。私はふと思った、彼女は本当にただの人形なのか?

ノアは朝食のテーブルで、私が人形を気に入っていることについて冗談を言った。ママは、私が新しいお友達を作るようにと優しく促した。でも、私の頭の中は人形と日記のことでいっぱいだった。

昼間、私たちは近所を探検しに行った。私たちの屋敷の周りには森が広がっていて、そこには野生の動物や美しい花がいっぱいだった。ノアは野生のトカゲを追いかけてはしゃいでいたが、私の気持ちは重かった。日記に書かれていた秘密の実験、そして人形の正体について考えると、胸がざわついた。

夕方になると、屋敷の雰囲気は変わった。影が長く、暗くなり、家の中の音がよりはっきりと聞こえるようになった。窓の外には、不気味なくらい静かな森が広がっていた。私たちは家の中で、おばあちゃんから受け継いだ古いボードゲームをした。でも、私は人形があまりにも本物の子供のように見えて、気が散ってしまった。

ベッドに戻ると、私は日記を開いて読み続けた。ミスター・シルバーは、ある特別な実験について書いていた。それは、人間の影を物質化し、生きた人形に宿す実験だった。日記の最後のエントリーは、急に終わっていた。そこには、ただ一言、「始まった…」とだけ書かれていた。

その夜、私はまた変な夢を見た。森の中で迷い込み、私の影が私から離れて別の生き物になる夢だった。私は目覚めてベッドに座り、人形のアリエルを見つめた。彼女の瞳は、夜の闇に溶け込んでいるようだった。

「アリエル、あなたは何者?」と私は囁いた。すると、窓の外から微かな声が聞こえてきたような気がした。風だろうか、それとも…?

私は決心した。この屋敷の秘密を解き明かすために、アリエルと一緒に謎を追うのだ。そして、私の新しい友達であるアリエルと、屋敷が隠している暗い過去について知る。物語はここから始まるのだと、私は知っていた。

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