その日、大学の調査チームは、日本の有名な心霊スポットの一つに足を踏み入れた。目的は、廃墟と化した旧精神病院で不可解な現象の調査だった。チームの一人、直樹は持参したデジタルレコーダーにこだわりがあった。EVP(Electronic Voice Phenomenon:電子音声現象)の研究で知られる彼は、このレコーダーで何かを捉えたかった。
彼らが病院の廃墟に足を踏み入れると、研究に夢中の一行は昼夜を問わず様々な角度から調査を進めた。しかし、3日目の夜、直樹が一人で録音セッションをしていると、彼のレコーダーは奇妙な囁き声をキャッチした。その声は「出て行け」と繰り返していた。
直樹はすぐに他のメンバーにこの発見を共有したが、不思議なことに、他の誰もその声をレコーダーで聞くことができなかった。それから不可解な現象は一層激しさを増し、メンバーの一人が突如失踪した。
捜索中、彼らは壁に掲げられた古びた人形を見つけた。その人形は病院の元院長が所有していたという噂のもので、人形には呪いがあると言われていた。人形の存在が、この場所で起こる怪奇現象の源かもしれないと直樹は考えた。
結局、失踪したメンバーは見つからず、チームは解散を余儀なくされた。直樹はそのレコーダーを再び調べると、なぜか以前の「出て行け」という囁き声ではなく、彼の名を呼ぶ声が録音されていた。声の主は、消えたメンバーのものだった。
直樹は真実を確かめるため、再び廃墟に単身で向かうが、その後彼からの連絡は途絶えた。一年後、廃墟で直樹のデジタルレコーダーだけが発見された。レコーダーには、直樹が最後に体験したであろう怖い話が残されていた。そしてそれは、 つづく